「純然たる新曲」がなかろうが、

名盤であることにまったく変わりはないわけで。

鈴木祥子

鈴木祥子

先行シングル『LOVE/IDENTIFIED』の生々しさ『契約(スペルバインド)』の不安定さ…息苦しいほどの密度を保ったラブ・ソングにはただただ圧倒されるばかり。切実で説得力のある歌声に耳を傾けざるをえません。

カーネーションとのコンビネーションは流石の一言。特に直枝政弘との声の相性は蜜月を思わせるほどに甘甘。ちょっと照れてしまうくらい。一方、芳垣安洋勝井祐二といったそっち方面のプレイヤーとの相性は…ううん、どうなんでしょうね。お互いの個性がいまいち噛み合っていないように感じられたのですが。

印象深い楽曲は『Frederick』と『忘却』。パティ・スミスのカヴァーである『Frederick』は、そらもう原曲を上回らん勢いでカッコ良く、『忘却』は「誰を愛してたんだっけ? 忘れた」という詞にドキリとさせられます。明確な対象はなくとも色々と喚起させられるというか。色々な意味で心乱されます。