MAMALAID RAG@東京キネマ倶楽部

楽曲はメロディアスで耳心地が好い。けれどいささかあっさりしていて面白みには欠ける、というのがCD音源を聴き抱いた印象でした。ひょっとするととんでもなく退屈なライブになるのでは…と、少しハラハラしつつ臨んだ初見のママレイド・ラグ。さて結果はと云えば、圧巻、と言っても決してオーバーではないほどの見事なステージでした。メロディアスな曲を少しくぐもった声で穏やかに歌い(歌声はムーンライダーズかしぶちさん系統!あとキリンジ弟。…と思う)、その歌唱は終始安定、そしてギター・ソロを弾かせれば途端に男臭いブルージーな音色を奏でるヴォーカル・ギターの田中拡邦氏……ええ、このギャップにすっかりやられましたとも。CD通りには決してならず、歌にも演奏にも徹底したアレンジを施し、メリハリとライブならではのグルーヴ感を付加。この人たちの本領は断然ライブなのだなぁ…、と実感した次第です。唸らされたのは本編ラストの展開。『朝焼け』と『銀の爪』、この2曲のストイックなまでな緊張感はちょっと息を呑むほどで、今までとは明らかに空気が違ったように感じられました。そしてスロウな片恋ソング『夜汽車』でホッと一息入れ『ふたりで目覚めたら』のありふれた多幸感にグッときて、本編は終了。ダレることない濃密な時間。いやよかった本当によかった。さて、この日のライブをもってベースの江崎氏は脱退、とのことでしたが、感傷に浸らせる場面などはなく、まるで本人たちの佇まいの如く淡々としたステージであったのが、なんとも潔い。


完全に余談ではありますが。ヴォーカル・ギターの田中氏は類稀なる美男子でして、会場にいらした女子の皆さまのほとんどは彼にメロメロであったのではないかと勝手に推測。細身のジーンズ、ストライプのシャツにタイを合わせ足元はオールスターズ…確かに素敵だ。一方の江崎氏もかなりの男前。ママレイド・ラグ、2人のビジュアルをガンガン推していけば結構な売り上げをのぞめたのではないか、なんていやらしく考えてみたりもしましたが、そんな売り方ちょっといやだよね。